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よみたい!ネット
エッセイ

 


第11回 異性人コミュニケーション

柊野ポネ  
 

 

 ベイブレード、というモノをご存知だろうか。
 なんのことはない、現代版のおもちゃのコマである。これがいまの男のコドモたちの間ですごい人気なのだそうだ。もとはコレをあやつる男の子が主人公のアニメ番組から火がついたらしいのだが、なにがすごいって、ほしい!と思ってもおもちゃ屋など売っているところにないのだからすごい。入荷はいつになるかわからない品切れ状態が常なのだ。
 値段にしたらコマ本体など数百円にすぎないし、手にとってみると「こんなモンがぁ」というような小ゴマである。それがユーガくらいの年齢の男の子たちにかかると、おのおのの戦闘能力をそなえたパーツを組み合わせた最強のベイブレードを「レーザーサイト機構を搭載したスナイパ―グリップ」で「マグネベースで軌道方向を変化させてジグザグ攻撃に転じさせ」と、こうきちゃう。
 ユーガははじめこそ激しくぶつかりあう、この「コマ合戦」に多少ビビッていたムキもあるが、彼には回転するものに対していつまでも凝視して楽しむところがある。自分ひとりでは力足らずでうまく回しきることはできないが、それはそれでよろこんでいるようだった。それならということで、(しかたないじゃんね)親は動きましたよ。
 入荷が期待できる店に申し込みをし、抽選券にあたり、父親とふたりでお正月にバスに乗って(母はそのときいなかった!)指定された時間に整理券をもって売り場にならんだ。現物が選べる時間はたったの10分。前日パパはタカラのHPをみて、いろいろなパーツの勉強をしていたけれどね。
 そんな努力が実ったいま、ヤツはそれであそんでいるかって?オトモダチがいそしんでいるとき、じっと戦線を見守るという役目ですね、やっぱり。フツーの男の子への仲間入りは、こーゆー面でもなかなかきびしいものがあるんです。

 

 男の子といえば、最近は服装に関しても悩む。ユーガが生まれたときから、あまり母親の私自身が、男とか女とかそーゆー分別をもって(なにごともね)行動させたことがなかったので、自分の好みからユニセックス的な服ばかり着せていた。髪型もしかり。これはたんにユーガが散髪をいやがるので、知り合いの美容師のコからもらったおさがりの隙バサミでシャギー風に(もーいわないか?)私がばさばさ切っておしまい。ロン毛をめざしているわけじゃないけど自然とそうなる。
 小学生になっても本人が好みをいわないことをいいことにその路線は変わらず、本人の着替えがスムーズにひとりでできるように、上はボタンかけのないもの、下はゴムのはいったパンツをベースと心がけて、デザインなどはサイケな(これも古い?)ピンクの花柄Tシャツとかもバンバン着せていかせていた。
 しかし中身と行動はともかく、小学生も2年もやっていると、そんななりも似合わなくなりつつある。私も近ごろではさすがにヤンママ(これも死語?)にまじって、チャビギャンやヒスミニ(知っているひとはご存知であろうが。その手のママが好むコドモ服のブランドネームである)のバザールに駆け込むこともなくなったし。ほかの男の子たちに溶け込みながらも本人の短所(ショーガイ児ということかな、とりあえず)をやわらかくカバーしつつ、まわりのオトナたちにも(スーパーでちょっとキャーと騒いでいても、とりあえず)かわいらしく好ましくうつる、そんなイデタチの小学生像を母は日々模索している。
 それと、床屋さん(美容院ではない)にいって、一度耳だしのあの坊っちゃんカットにしてもらうのも大いなる夢のひとつだ。それだけの長い時間、ひとりですわって散髪してもらえるなら、その日はユーガにとってアニバーサリーになる。

 

 「男の子を育てていると、母親もいつしかオトコみたいになってくるわよ」
 仕事でおつきあいしている小4双子の男の子の母によると、立ち振る舞い、ことばづかいにとどまらず、「食生活もよ。ハンバーグだっていまは手のひらサイズを私もつくるし、おやつのアイスクリームだってカップサイズなんか買わないの」ということだ。ふだんはとても「シックでエレガンス」的な同業者のお方なだけに、それはそれでとても魅力的な一面を聞いたようだったけれど。
 いわれてみれば、わが家でも以前はユーガの朝食なんてトースト焼いてヨーグルトとイチゴ、なんてものを食べたか食べないくらいだったけれど、最近はとてもとてもお昼までもたなくて(4時間目の授業が空腹で受けられないそーです。とシーナ先生がいっていた)まるで温泉旅館のような品数、ボリュームともばっちりの和定食?に変わった。
 コドモは姉妹ふたりだけのお宅で夕食をいただいたときがあったけれど、小さな器がほんの数品、かわいくならべられていただけであったね。インフルエンザで倒れた友人に、トン汁を鍋いっぱいにつくって玄関先へ届けておいたのだが、4日間ほど食べきるまであったそうだ。彼女の娘もひとりっこだった。考えてみれば病気のママと女の子ひとりが食べる量なんてたかが知れてますわね。
 うーん、私が太る理由もここにもあったわけだ。 しかし、そのぶん運動量は多いと思うんだけど。イタズラがすぎたときに走っていって、首根っこをつかまえたり、ときにはまわし蹴りで(ギャクタイ、ではありませぬ)その行く手をさえぎったり。そーゆーオトコっぽい所作が、今度はオバサン化に徐々に移行していくのだろーね。そっちのほうが私ゃこわいのぉ。(もー、そーだったりして)

 

 このごろ、ユーガには週1、2回のペースでいっしょになってあそんで面倒をみてくれるおにいさんができた。家の前の公園でサッカーや鉄棒や自転車のりを教わったりしながら、学校帰りにすごす。勉強じゃなくて、いわば運動やあそびの家庭教師兼ベビー?シッターとしてきてもらっている。
 最初は私に仕事がはいったときに、ユーガのことをみてくれる人探しからはじまったことだった(ご近所のなかよしのお宅におねがいするのも限度もあるしね)。学校や通っている訓練先の先生方からの後押しもあって(「ひとりっこのユーガにはそういう存在って必要よ」)、どうせならユーガにとってためになる方向へ、ということになった。
 相手のハイバラさんは25歳、言語訓練の教育実習でユーガを担当してくださった学生さんで、将来は児童福祉関係の仕事につきたいので勉強のためにもやらせてください、と申しでてくれた。ユーガの特質もわかってかわいがってもいてくれるので、いまのところおまかせしている。
 この間、こっそり窓からみていたら、ふたりで追いかけっこばかりしていたけどね。うーん、お互い(ハイバラくんとユーガね)がお互いのために役立つ日がはやくくるといいけれど。
  「たいへんでしょ、なにかできることがあったらいってね」と労力のわりには少ないかもしれないバイト代を彼にわたすとき、つい私もことばがでる。よくみていると、ふたりだけの連帯感みたいなものがすでにできつつあるようだけどね。ふーん、なるほどね。

 

 オトコであるってことを意識して育てていくことが、これから増えていくんだろうなぁ、と思う。こんなチビでこれだからね。思春期になってますます謎めく存在になってきたら、その混乱はどこまでいくのだろーとちょっと不安だ。そして私は、日々オンナの意識を薄皮のように剥ぎとられていっているとしたら?

 

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