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よみたい!ネット
エッセイ

 


第12回 夢見るように眠りたい

柊野ポネ  
 

 

 春休み、ですね。
 春が近づくと夜ふかしができなくなってきた。昔から眠ることが苦手で、就寝まえに仕事なんかしちゃうと頭がさえちゃって寝つけなかった私が、最近は10時ごろに寝てしまう。朝までひと眠り。快適ですね。ずっとあこがれていたんだ、熟睡できる体とココロ。理由はわからない。でもこれって老化現象のはじまり??
 この木の芽時って体調を崩しやすくてイヤだってひとが多いんだけど、私はすきなんだよね。一年間コドモの行事につきあってやれやれ、ということもあって、のんびりした気分で朝もすこしはゆっくりしてられる。あたたかくなってきた日差しがはいってくる部屋で、ゴロゴロ過ごすって至福のときだあ。読みたい本が手元にあって予定がなくて約束がゼロに近いほど、快適というヒトなんです、私。
 ホントのとこは、ユーガも早いもので4月から3年生だしね、(オー、もー低学年じゃないんだよ)身辺自立のことなどしっかり身につけてやってもらわにゃならん年齢のリミットらしきものが近づきつつあるし、思い悩めばあれもこれもと思う。だからこそ、この休息日、小休止は大切にしたい。飛びたつまえの助走ね。いざというとき集中力を高めるための。その集中できる時間も最近はトミに短くなってきていることもあるんだけど。

 

 リゾートホテルへ1泊、母と子たちだけで出かけてきた。そーゆー心持ちからいってこの種の旅の目的は、はっきりいって母たちのリフレッシュ旅行のようなものですね。とはいってもコドモは6人いたし、電車にも2時間以上も乗って移動もし、夜の夕食時はフレンチレストランであった。にもかかわらず、いままでのどの旅行よりも母たちはのんびりできたような気がしている。コドモたちが(様々なハンディはあるんだけど)それぞれのところで年齢とともに成長しあっているということなんだろう。
 成長なんかしてるのかぁ、と思われつづけてきた?ユーガも、この冬でひとり寝ができるようになったし、お手伝いへの自覚もでてきて、ほんのすこしずつではあるが親への負担が減りつつある。ひとりでお留守番は無理だけど、旅行先でもお風呂場で私が髪を洗っているあいだ、ヤツの手をずっとにぎっていなくちゃいけないということはなくなった。ことばは話せなくてもこちら側とのコミュニケーションを彼なりに得ているのかな、とも感じる。
 何年かまえにつれていったときはただ泣いて過ごしたスキー場で、今年は自分でソリ遊びをして楽しむことができた。なにかができる、ということ以前になにかを楽しむ、ということができなかったユーガが自分ひとりで行動し、ジュージツした時間を過ごせられるようになったことは、この一年での大きな進歩かもしれない。

 

 その反面、一年一年がこれからは矢のように加速づいて過ぎていくんだろーな、とも思う。あッというまに6年生になって体だけデカクなって、中身はいまとそんなに大差なかったらどーしよー、とかね。ゴロゴロしながらも、節目の時期に母はいろいろ考える。
 知りあいの年配のご夫婦に、ユーガと同じショーガイをもった二十歳過ぎの息子さんがいらっしゃる。彼は中学から養護学校に入り、ショーガイ的に重度のためにあえて高等部へは進まず、施設に入所して(まわりの親御さんたちといっしょにご両親が設立されたそーだ)家族から離れて生活している。彼はことばを話さず、身のまわりのことも周囲の手助けがいることも多いという。私たちにも同じ境遇のコドモがいるとわかってからは、あれこれ心配して電話を下さったりしている。
 そんなご家族の様子は自分たちの将来、そう遠くでもない姿だと最近は感じますね、やっぱり。ショーガイをもったコドモのために、よりよい環境を求めてアメリカに移住の準備をしている友人もいて、そういうひとの話を聞くとなんとなくこちらの心も揺れてしまう。

 

 旅行にいってコドモたちが寝静まったあと、母たちだけで他愛のない話をしていても、学校という場がなくなったあとのコドモたちの行く末について話したりもするようになった。自分たちの仕事や趣味や特技をいいあって、笑い話のなかにもなにか役立つことはないかといいあう。私は人生を逆算してこれを達成するためにこの時期までにこれを習得する、という生き方はできないほうだけれど、そーゆー気構えはこれから日一日と必要になってくるのかもしれない、とも思ったりする。それが私のするべきあらたな「仕事」になっていくのかなあ、とかね。

 

 いま読んでいる本のなかで、不思議な職業(架空のね)に就いている人々を写真入りで紹介している一冊があった。これから実るであろう果実の数を一本の樹木から予測する「果実勘定士」、白いシャツだけを製作する「白シャツ工房」、冬の間しか開館しない「冬眠図書館」の「シチュー当番」など。ありそうもないんだけど、編集者の意図されたカラクリを探りつつ、もしかしたら職業として成りたつのではないか?という可能性を模索しながら最後まで読んでしまった。ユーガのまわりのさまざまなハンディをもったコドモたちの顔を思いだしながら。
 実際いつだったか、信州にいったとき、森の中に小さなメリーゴーランドがあって、そこで乗りにやってくるコドモたちをひとり世話していたのが、ダウン症の青年だった。彼はことばを話すことができなかったが、とてもいっしょうけんめいに働いていた。いってみれば「森の中のメリーゴーランドの番人」か。深い緑にかこまれて回り続けるメリーゴーランドとその横でたたずむ彼の笑顔。すてきな絵をみているようだった。

 

 自分の職業に生きがいや夢をかけられる、なんてことが少なくなっている世の中ですからね。こーいったことはホントの夢物語なのかもしれない。
 わかってるんだけど。でもいま母は眠りたいのです。物憂い春の日、ひとときの夢とお笑いください。ふっと目が醒めて、自分には果たさなければならない約束が差し迫っていることに気づくまで。

 

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