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よみたい!ネット
エッセイ

 


第18回 Gという名の素顔

柊野ポネ  
 

 

 年があけて。そろそろと動きはじめているころ。今年はちょっとスローペースをなにごとにも心がけてみようかと思ったり、思わなかったり。年末からお正月にかけて諸行事をこなしている自分から、日常の自分が戻ってきても走りださないアタクシです。いや、実家に帰っておせちを食べ、なにもせず考えず、ぽわーっとしている自分が本当の私なのかもしれぬ。そんなこんなでひと月がすぎる。

 

 最近のユーガ。学校や「塾」帰りのあと、家でもっぱら自分の部屋にこもって「基地」づくりにはげんでいる。押入れに入りこんだり、ベッドからふとん類をひきずりおとして、部屋の片隅に自分の周りをかこむ「砦」をつくる。クッションやぬいぐるみが部屋中にちらばって、足の踏み場もない。部屋をのぞいて姿がみえないので、おわっ、出てった?とあわてて窓から公園のジャングルジムをチェックしていると、もぞもぞ動くヒトの気配が。今度はベッドと壁のせまい隙間に体を押しこんで目を光らせ、じっと寝ているヤツがいる。
 
うーんとね。こーゆーことすると落ちつくみたいですよ、ユーガは。これがやすらぎのひとときというか、学校など「外」の世界に長時間自分がいると、身の置き場を自分で確かめたくなるのか、どこか隙間をつくってすべりこみたくなるらしい。せまいトコを通りぬけるのもやめられない。下校の道すがら、家の塀と駐車された車の列とのわずか細い空間を、ランドセルを背負い苦心しながらも絶対に!通りぬけようとする意志でみなぎっているときがある。

 

 自分の体格を自覚できないから、そうやって他と接触することによって確認しようとしているんです、とST(言語訓練士)の先生にいわれたことがあったなぁ。ほかに害を及ぼすことでもないので、そーゆーときはできるだけ自由にさせている。しかし今朝などは寝ているユーガを起こしにいったら、ベッドからぬけだして「基地」のなかで毛布にくるまって寒そうに寝ていた。夜中にひとりで起きて移動をこころみたらしい。
 しばらく続くのかしらん、これ。うれしくなるとその場カエル跳びをしたり、顔の前で両手を合わせるように震わせてみたり、彼には日常においてやり続けている「動作」が様々あるが、今まではそんなに強いこだわりを、あちらこちらでもたないほうだった。これからはどうなるんだろー。気に入らないと、いうことを聞かず抵抗して、頑として動こうとしないときも最近はあるからなぁ。反抗期か障害のなせる行動か、その見極めがむずかしくなってきた。

 

 ユーガは自閉症と一応いわれていて、独特のこだわりがある生活をおくっていると思われがちなんだけれど、(ほら、古い映画で恐縮ですが、わかりやすい例でいうと「レインマン」のダスティン・ホフマンなんかこだわりまくって演っていたでしょ?)でも今は、昔にくらべるとショーガイ児の早期発見!療育が地域でも充実してきているので、学童期にはいると行動が激しいタイプのGちゃんでも(自閉の「じ」イコールGです。私たち母同士でときどきこー呼ぶ♪親しみこめて)少しずつ落ちついてくるコドモたちが多いらしい、のです。
 そのかわりというか、ひと昔のような画一的な行動ではくくれなくなってきて、症状はみな多彩だ。ひとりとして特徴が似かようGちゃんはユーガのまわりにだっていない気がする。ヒト好きがしてヒト懐こくって、偏食がなくて、トモダチと勉強もできて、行動もおとなしいイイコちゃん、だけど自閉症なんだって、というコもいる。

 

 最近は、テレビでも自閉症のヒトが登場したりするドラマがよくありますよね。ちょっとまえまでは、これがいかにも教科書どおりのいわゆる「自閉症的」特徴がこれでもか、とばかりにでてきて笑っちゃうときがあった。
 床屋の赤と青がぐるぐる回っている看板を飽きずにみているシーンが登場して、朝食はストロベリー・ヨーグルトを絶対に食べないと出かけらない。年号や数字の暗記力は超人的で、芸術分野では類まれな才能が眠っている、とこうきちゃう。
 そんなに全部セットで備っているコがいたら、子育てもさぞかし楽しいだろうなっ、と夢みつつ楽しむこともできる。逆にあまりにも上手にリアルに演じられちゃうと、またそれはそれで笑っちゃうんだけどね。「ホンモノ」のひと、つれてきちゃった、もしかして?と観察しつつ、その演技力に後日身内でいたく感動しあう。
 秀でたものがでてこなくってそれを確かめるために、親をふくめてまわりが四苦八苦しているというのがほとんどだろうから(ユーガのように)、たまにはあまり劇的でない平凡(平凡、というのもヘンだが)なGちゃんを主役じゃなく脇役でいいから、おしゃれに誰か演ってくれないかな。香取くんとかあたりに。どーでしょ。

 

 年相応な振るまいができて、行動においてまわりのヒトの手をあまりわずらわすことなく毎日が暮らせるようにと願いつつ、でもあきらかに「フツー」のコとは遠い隔たりがあるユーガのこれからの少年時代、その「個性」をいかにして育み、どうしていくべきか、と最近よく思う。
 まぁ、最終的にはあのオトタケ君がよくいっていることで、「あいつってそういえば五体満足じゃないんだね」っていわれるようになったら最高なんですが。「そういえばユーガって自閉症なんだよね」って。人生においてそれだけの仕事というか役割が、ユーガにできればいいけどね。彼が自分の人生で主役になれるように、今年もがんばっていきましょうかね。スロースターターな年にふさわしい、遅めの抱負であります。

 

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