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よみたい!ネット
エッセイ

 

私とコンビニ


田中雅代  
 

 

 マンションの階段を駆け下りて屋外へ出る。少し肌寒く感じる夜風が気持ちいい。何も荷物を持たず、子どもと手を繋がずに、自分のペースで外を歩く。手を振って歩くだけで少し開放的な気分になる。子どもが寝るのを待って夫に留守を頼み、私は夜の散歩へと出かける。
  小さな子どもがいる子育て中の母親にとって、一人になれる時間、「私」でいられる時間は限られてくる。我が子はかわいいと思うけれど、起きている時間は目が離せず、自分が寝てからも夜泣きをすれば起きて抱っこをする毎日の中、ほっとする瞬間だ。
 夜の散歩で向かう先は、近くのコンビニエンスストア。すでに町は眠り始めているのに、ここだけは多くの人が出たり入ったりして、まるで別世界。

 

 店の入り口にしゃがんでいる若者たち・・・
 雑誌を読んでいる背広姿の男の人・・・
 買い物かご片手に携帯で話している女の子・・・

 

 いろいろな人がいる・・・と人間ウオッチングするのも楽しい。私は、ふらふらと店内を物色して歩く・・・。ここでは、私も小さな子どものいる主婦ではなく、コンビニで買い物をするただの人にすぎない。

 

 確か私が小学校3年生の頃、家の近くに1軒のコンビニエンスストアがオープンした。当時、朝7時から夜11時まで営業しているお店は当然ながら他にはなく、何でも買えるコンビニが「魔法のお店」に思えた。100円玉を握り締めて、肉まんを買いに行ったり、流行っていたスーパーヨーヨーを買った記憶は鮮明に残っている。
  そんな「魔法のお店」も、今はあたり前のようにどこにでも存在する。

 

 子連れでコンビニに行きにくく感じる。おべんとうを作る時間がなくて、お昼ご飯を「コンビニのお弁当」ですませてしまう時、何となく罪悪感にかられるのは私だけであろうか・・・。
  どの主婦向けの雑誌を見ても「節約」に関する特集がない時はないぐらい、いかに食費を減らすか、外食を減らすかが取り上げられているのが目につく。品物が定価で売られているコンビニは「安いスーパーを何軒もはしごして買い物する主婦」の対極にあると思う。また、子どもには手作りのおべんとうを食べさせてあげたいと思う。そんなところから「コンビニのお弁当」を買う時に、主婦失格の烙印を押されたような、ちょっと切ない気持ちになるのかもしれない。

 

 子どもが寝てから、ひとりで堂々とコンビニの店内を歩く。ビールのおつまみでも買って、夫とビデオを見ようかな…。
  外に出て空を見上げると、大きな丸い月が空にぽっかり浮かんで見える。家族の待つ家へ戻る私は、自然に小走りになっていた。今の私にとっても「魔法のお店」であるコンビニを後にして…。

 

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