ある日のランチ。久しぶりに幼稚園時代のママたちがあつまって優雅にイタリアンレストランでお食事、という光景。
私もいつもの登校着を脱ぎすて集う。ワインなんか頼みたいじゃない、と思いし瞬間、ヒジョーにも携帯が鳴り響く。学校からの着メロはサティの「あなたがほしい」。通話ボタンを押す前に用件はだいたい想像がつくように設定してある。
「モシモシ」息をつめながら出たくはないがいってみる。
「ああ、もしもし。わたくし、綿帽子小学校のクサナギと申しますが」
教務主任のツヨモンなのね。よりによって。とすれば重大事件発生か。
「ユーガくんが実はですね。粗相をしてしまいまして。着替えがございませんので一度、おかあさまに届けていただきたいと思いまして」
遠足でもスーツ姿であらわれるクサナギ先生の、(私とあまり変わらない年齢のハズだぜ、たぶん)折り目正しいことばづかいと沈着冷静な声に、私も負けずあわてず受け答える。
あーあ。きのうなら学校から5分の家にいたんだけどな。
私が電話をしている間、ママたちにも「またユーユ、やっちゃったかなモード」が立ち込めていくのがわかる。
携帯をきり厨房にむかい、コックさんたちに 「すみません、私のペンネいちばん最後にしてくれませんか」 と頼み、 「ちょっくら行ってくるね」 とママたちにいう。
「いってらっしゃい」「待ってるね」「事故らないでね」という声に送られつつ店をでる。(びっくりしてるんだろうけど顔にださないのは、やっぱりみんなも「母」だから、ということなんでしょうかねぇ)
私は学校に取って返しユーガをうけとり(実は粗相はお下痢だったのだ)、家のシャワーをあびせ着替えをすませ、教室で待っている先生に手渡しした。
彼は、無事5時間目の「さんすう」の授業を受けることができたし、私は私で、この間の用を30分でこなし、また、かのレストランに戻ってママたちがデザートを食べている間、ペンネを食べることができた。めでたし、めでたしであった。
「子育てなんてそんなもんよ、ってみんなはいってくれるんだけどね。みんな3人とか4人とか育ててるひとも多いから、ユーユなんてかわいいもんよ、なんてさ」
「うん、だけどフツーのコっていうのはそういう手間はある程度で卒業するわけよね。でも私たちの場合はどうなんだろう。ずっとずっと続いていくキョーフはあるよね」
こーやって、ひそかにまわりのひとに支えられながら、この一年はやってこれたのかな、と思う。そーやって笑い話にしなければやってこれなかった、という悲しい現実の裏返しでもあるのだが。