<シリーズ>
天使、なんて呼べない。
第18回
Gという名の素顔
柊野ポネ
最近のユーガ。学校や「塾」帰りのあと、家でもっぱら自分の部屋にこもって「基地」づくりにはげんでいる。押入れに入りこんだり、ベッドからふとん類をひきずりおとして、部屋の片隅に自分の周りをかこむ「砦」をつくる。クッションやぬいぐるみが部屋中にちらばって、足の踏み場もない。部屋をのぞいて姿がみえないので、おわっ、出てった?とあわてて窓から公園のジャングルジムをチェックしていると、もぞもぞ動くヒトの気配が。今度はベッドと壁のせまい隙間に体を押しこんで目を光らせ、じっと寝ているヤツがいる。
うーんとね。こーゆーことすると落ちつくみたいですよ、ユーガは。これがやすらぎのひとときというか、学校など「外」の世界に長時間自分がいると、身の置き場を自分で確かめたくなるのか、どこか隙間をつくってすべりこみたくなるらしい。せまいトコを通りぬけるのもやめられない。下校の道すがら、家の塀と駐車された車の列とのわずか細い空間を、ランドセルを背負い苦心しながらも絶対に!通りぬけようとする意志でみなぎっているときがある。
自分の体格を自覚できないから、そうやって他と接触することによって確認しようとしているんです、とST(言語訓練士)の先生にいわれたことがあったなぁ。ほかに害を及ぼすことでもないので、そーゆーときはできるだけ自由にさせている。しかし今朝などは寝ているユーガを起こしにいったら、ベッドからぬけだして「基地」のなかで毛布にくるまって寒そうに寝ていた。夜中にひとりで起きて移動をこころみたらしい。
しばらく続くのかしらん、これ。うれしくなるとその場カエル跳びをしたり、顔の前で両手を合わせるように震わせてみたり、彼には日常においてやり続けている「動作」が様々あるが、今まではそんなに強いこだわりを、あちらこちらでもたないほうだった。これからはどうなるんだろー。気に入らないと、いうことを聞かず抵抗して、頑として動こうとしないときも最近はあるからなぁ。反抗期か障害のなせる行動か、その見極めがむずかしくなってきた。