密航少年Kayの亜米利加見聞記Vol.3(つづき)

●借りたパスポートで米国へ

 

 国領君のパスポートを手にした僕は、いよいよアメリカへ渡る準備に取りかかった。世話になった人々に別れを告げたい気持ちはあったが、他人のパスポートで米国へ行くとも言えず、また言えば違法と知りつつパスポートを貸してくれた国領君に迷惑がかかる。向こうに着いてから葉書でも出して、挨拶もせずに別れたお詫びをしようと思い、一人でそっと出発することにした。
 出発の朝は、同じ宿の住人にも何も言わず、まっすぐ停車場に行ってパスポートを見せて切符を買った。駅員はパスポートを裏表見ていたが何とも言わなかった。
 午後二時過ぎ、車内がざわめくので目を覚ますと、米国とカナダの国境にさしかかったところで、パスポートの検査のため乗務員が回ってきているのだった。
 パスポートを出すと、検査官は写真と僕の顔を見くらべていたが無事にパスした。他の検査官は荷物を調べながら旅行目的を聞く。とっさの思いつきで「シアトルから船で日本に帰るのだ」と言うと、「まあシアトルをゆっくり見物でもして帰りたまえ」と笑いながら言って去った。
 これで、全部パスした。もう大丈夫だ。しかし、シアトル市で何をすればいいのだろう。どこに行けばいいのだろう。知人も友人も一人もいない。ポケットにはわずかに十ドル足らずの金があるばかりである。先々のことを考えると不安は尽きないが、不思議と後悔の念はなかった。

 

 四時過ぎにようやく汽車はシアトルに着いた。シアトルの駅を出て、はじめて踏んだアメリカの土。行き交う人も町並みも、バンクーバーとは大きな差があった。道行く人も、人は人、自分は自分という感じで、どちらへ行こうか迷っている日本人の少年などに足を止めて話しかける者もいない。道を聞いても、ろくに返事もせずに足早に通り過ぎていく。英国人と米国人の違いだろうか。それとも大都会と小都市の違いなのか。自分がすっかり田舎者になったような感じで当惑するばかりだった。

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