密航少年Kayの亜米利加見聞記Vol.5(つづき)

●アラスカへの誘い

 

 僕のいるホテルでは、夜七時過ぎになると皆応接間に寄って、雑談したり本を読んだりしている。最初は僕が新米の青二才と思ってか、ほとんど相手にしてくれなかったが、日が経つにつれて、話の輪に入れてもらえるようになってきた。
 その中にアラスカボーイが一人いた。なかなか人は良さそうに見えるが、一年を三月か四月で暮らすだけに他の人たちとは肌合いが違い、一見してアラスカボーイとわかる独特の雰囲気を持っている。
 陸地を離れれば、二ヶ月余の船の中と僅か一ヶ月の仕事の合間合間は賭博ばかりしていて、ほとんど巻き上げられてしまうが、先貸しもするので、またやってまた巻き上げられるという。サンフランシスコに上陸しては毎日玉突き場へ行き、また毎日を遊んで暮らすわけである。

 

 ある晩、このアラスカボーイが僕に、
「君、一度アラスカへ行ってみないか。変わったところもあっておもしろいぞ。缶詰工場の仕事は一ヶ月ぐらい。往復は船だが船賃はいらない。一往復三ヶ月でそのうち仕事は一ヶ月、食事付きで百五十ドルだ」
 僕も一度はアラスカを見たいと思っていたから、旅費も食費も先方負担で、しかも給料付きで行けるというのは魅力だと思った。もちろんアラスカボーイについての悪い評判は承知の上だ。でも自分をしっかり持って、まわりに染まらずにいれば恐れるに足らず、という気がした。

 

 佐藤氏に相談してみると、彼はしばらく考えてから、
「まあ一度ぐらい行くのもいいだろう。だけど君は一度だけにして、帰ってきたら必ず一生懸命勉強するのだぞ」
 と釘を差された。
 うなずきながらも僕の心ははやくも、まだ見ぬアラスカの大地、沈まぬ太陽に飛んでいた。

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