●男子学生倶楽部
学校の始まる二、三日前までに、ほとんどの学生が帰ってきていた。みんな真っ黒で、夏休み中に自分がどんなに活躍したかを話し合う。皆上流家庭の子弟だが、力のいる仕事をして来たほど自慢になるのは、いかにも勤労を誇りとするアメリカの青年らしい。
「真っ黒になったろう」「太くなったろう」と自分の腕を見せて大いばりする。数百マイル先の牧場で、暑い盛りに牧草を刈り取る仕事をしてきた強者がいる。干し草の束一個が百キロもある重労働だ。そこまでの力仕事ができない学生は、フレスノ地方のぶどうの収穫作業に行く。これも草一つない焼け付くような砂原の中での作業で、なかには倒れる者も出るというが、この程度の仕事では大学生仲間の腕自慢では最上級にはランクされないという。
彼らは、自分がどんなに働くことができるか、自分の腕でどれほど賃金を得ることができるかを自慢し、人に示す。人もまた、そうした肉体作業のできる者を高く評価することは、我々日本人とは異なる勤労観を持っていると思わずにはいられなかった。
この男子学生倶楽部には十六人の学生がいた。四年生の中の一人が監督の地位にいて、他の学生に細かい注意をする。その監督学生のジャックが僕に、「君は今まで何を学んだか」と聞く。
「ハイスクールだけだ」「何が好きか」「機械工学に興味がある」というと、機械工学部のサムを紹介してくれた。
「よし、僕が連れていってやる。初めは聴講生で来い。倶楽部の仕事の合間に聴講したまえ」
これは願ってもない機会を手にした、と時間を見つけては聴講することにした。元々好きな機械のことだけに、他のことはなかなか覚えもしないのに、機械のことともなれば先輩のサムも驚くほどよく覚えた。倶楽部の学生も応援してくれて、わからないところを教えてくれたりもした。
アメリカでは、高校や大学の卒業証書や履歴書は重視されない。レファレンス(前歴証明書)が一番有効で、学歴よりは人物本位、技術本位に採用される。だから聴講生でも本科でも就職にはあまり関係がない。大事なのは技術だ、技術を身につけなくては、と毎日でも聴講する日々が続いた。
後に僕はこのとき勉強したことを生かしてエンジニアーとして勤めることになるのだが、それはまだだいぶ先のことである。